この小説は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
半分くらい本当のことです(笑)。
本文
夏休みに入ってから、外に出ずに朝からゲームをしたり、小説を読んだり、寝たり、ぐーたらしていた。冷房の効いた部屋で一日中ぐーたらするのは学生の至福の時間だと私は思う。
夏休み序盤にそんな生活を続けていたからだろうか、お母さんに、部屋にこもってないで外に出なさいって言われてしまった。
お母さんに、私友達いないから外行く用事できないって言ったら、それなら散歩にでも行けば良いと言われてしまった。
むぅ。
仕方がないので外に出ようとするも午後2時、太陽が照りつけていて人間が生存できる場所ではない。セミくんも暑いって悲鳴を上げている。死んでしまっては元も子もないので、玄関のドアを開けて数歩出たところで回れ右して家に帰る。
母よ、今外に出たら死んでしまう。わかってくれ。
さっきまで冷房が効いていた私の部屋が数分のうちに温まっている。げに恐ろしき太陽なり。こんなふうに暑さで頭がおかしくなってしまうのも無理はない。
パソコンも熱がこもると良くない、私の脳みそも精密機械なので熱に弱い、証明完了。
本格的に頭がおかしくなる前に、さっさと部屋の冷房を付ける。部屋が冷えるまで待てないので、冷房の下で服を脱ぎ冷風を直に受ける。
気持ちいぃィィ!
しばらくそんな事をしていると、さっき外に出たときの汗が冷えてお腹が痛くなってきた。普通に考えたら年頃の娘が部屋の中とはいえ、はしたないことをしてしまった。なによりお腹が冷えてしまった。
本格的に頭がおかしくなる前に、といったな? あれは嘘だ。既に頭がおかしくなっていたようだ。
脱ぎ捨てた服をもう一度着直して、お腹周りを少しだけ温かい格好にしてからスマホをポチポチ。ポチポチ。ポチポチ。
…お母さんがなにか言ってる。そろそろ散歩に行け? 何を言っているんだ、さっき外に出たばっかり、でもないのか。時計の針が既に5時を指している。恐ろしいね、スマホまだ3回しかポチポチしてないのに。
嫌々外に出てみると、2時に比べると涼しくなっている。それでも暑いけど。太陽が張り切り過ぎてるんだよ。
近くの公園を通るとセミくんたちが騒いでいた。こんなに暑いのに元気だなと思う。公園の中では小学生くらいの少年たちがサッカーをしている。
なんてことだ、奴らは暑さを感じないのか…? お前ら人間じゃねぇ! 私は外にいるだけで溶けそうなんだよ。
そんな中彼らは「ヘイ、パスパス!」とか言って走り回ってボールを蹴っている。咄嗟に人間じゃねぇって思ってしまうのも無理はないと思う。口に出してないからセーフだし。
よく見ると弟も混じって遊んでいる。お前も人間を辞めたというのか…?
適当にぶらついていると大通りに出た。
普段この道を歩かないから気づかなかったけど、道の脇に中国産のピカ◯ュウみたいな石像があった。これからこの石像のことをパチチュウと呼ぶことにしよう。
周りを見てみるとパチチュウ以外にも色々なものがある。
照りつける太陽と、捨てられたストゼ口の空き缶と、行き交う車と、照りつける太陽と、泉さんと一緒に子犬の散歩をしている桜ちゃん。
泉さんとは引っ越す前にご近所さんで、互いに仲良くさせてもらっていた。桜ちゃんが三歳くらいのときに泉家がアパートから一軒家に引っ越しをした。引っ越しといってもすぐ近くだけど。
私の弟が桜ちゃんと同い年で、泉さんとお母さんは懇談会で会ったり、一緒にお買い物するとか、今でも仲がいい。
そんなどうでもいいことを考えていたから、私は前方からスピードを出している車が来ていることに気づかなかった。
――ガシャン!
金属がひしゃげる音がする。衝撃で姿勢が崩れる。痛みはなく、ただ足が前に出ない。
その時、私は何が起きたのか分からなかった。
車は何事もなかったように走り去っていった。いや、なかったようにではない、本当に何もなかったのだ。
ことは単純で、私がストゼ口の空き缶を踏みつけて、その音に驚いてよろめいただけだ。私ダサすぎでしょ?
パチチュウもこちらを見て笑っている。本物ではなく偽物に笑われているというのが屈辱的だ。こっち見るな! 絶対お前も笑われてるからな、ブサイクって!
初対面のパチチュウと喧嘩してたらなんだか虚しくなってしまった。気分が萎えちゃったのでお散歩をここで切り上げて家に帰ろうかな。決してパチチュウとの喧嘩に負けたわけではない。
ここからだと来た道を戻るより別の道で帰ったほうが早く家に帰れる。
あれ? お散歩終わらなくない?
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